政事は豆腐の箱の如しである、箱が歪めば豆腐も歪む。(二宮尊徳:江戸時代後期の経世家、農政家、思想家)

豆腐は一見仏頂面だが、己一人でも冷や奴や湯豆腐のように存在感を示す一方で、肉・魚介・野菜等とも協調して相手になじみながらも、自分らしさを失わない。ふにゃふにゃしているが実を崩さないだけのしまりが有る。煮ても焼いても食えぬどころか、煮てよし焼いてよく、汁でもあんかけでもそれぞれの味を出す。強い者が幅をきかす競争社会には豆腐の如き柔らかさ自在さは貴重だ。人生を、豆腐の如くと語る。【俳人・荻原井泉水(1976年没)の随筆「豆腐」から】