雑な仕事をすれば、次に来た職人もそれを見てつい雑な仕事をする。だから「いい仕事」をしておきたいと、石積みの職人は言う。「金を欲しうてやる仕事だが決していい仕事ではない。 ことに冬など川の中などでやる仕事は、泣くにも泣けぬつらいことがある。 子供は石工にしたくない。 しかし自分は生涯それで暮らしたい。 田舎を歩いて何でもない岸などに見事な石の積み方をしてあるのを見ると、心をうたれることがある。 こんなところにこの石垣を造った石工は、どんなつもりでこんなに心をこめた仕事をしたのだろうと思って見る。 村の人以外には見てくれる人もいないのに・・・・・・」と。 (「庶民の発見」宮本常一著から)