反戦思想ゆえに戦場で苦悩する男を演じた「人間の條件」、三船敏郎さんの敵役だった「椿三十郎」などでの鬼気迫る演技が印象深い。その一方、ハチ公物語のような穏やかな役柄も魅力だった。その名優仲代達矢さんが逝った。彼は「自分の台詞を覚えるより相手の台詞を覚えろ。相手があってこちらは芝居ができるんだと。自分が攻撃的な演技をするばかりでなく相手を受けて返していく、それが芸の力なんだ。大切なのは相手の気持ちを察して行くことだ」と先輩から教わったという。そして、「相手を推測しなさい、許さないから戦争は起きるんだ。相手の気持ちになって考えてみれば許せるということもあるだろう。だから”忠臣蔵”と言うのも私はどうかなと思ったりするんです。仇討ちから戦争が始まるのは現代も同じじゃないですか?許せばいいんです」と。「戦争だけは二度とやっちゃいけない」という戦中派が旅っ立った【合掌】